モーメント
一般に
\[\mu_{k} = E[X^{k}] \]を、X の原点の周りの k 次のモーメントまたは積率という。また、
\[ \mu_{k}' = E[(X - E[X])^{k}] \]を、X の期待値の周りの k 次のモーメントという。
期待値と分散はモーメントで書き表すと次のようになる。
\[ E[X] = \mu_{1} \] \[ V[V] = E[(X - E[X])^{2}] = \mu_{2}' \]母関数
数列 \( a_{n} = a_{0}, a_{1}, a_{2}, \cdots , a_{n}, \cdots \) に対して、それを係数に持つ ∞ 次関数を
\[ f(x) = a_{0} + a_{1}x + a_{2}x^{2} + \cdots + a_{n}x^{n} + \cdots \]としたとき、f(x) のことを母関数という。また、{an} を f(x) の係数列という。
モーメント母関数
モーメント μ1、μ2、μ3、・・・を係数に持つ母関数を考える。ex をマクローリン展開すると、次のようになる。
\[ e^{x} = 1 + x + \frac{x^{2}}{2!} + \frac{x^{3}}{3!} + \frac{x^{4}}{4!} + \cdots \]ここで x = tX を代入する。
\[ e^{tX} = 1 + tX + \frac{(tX)^{2}}{2!} + \frac{(tX)^{3}}{3!} + \frac{(tX)^{4}}{4!} + \cdots \]両辺の期待値を計算すると
\[ \begin{eqnarray} E[e^{tX}] &=& 1 + tE[X] + \frac{t^{2}E[X^{2}]}{2!} + \frac{t^{3}E[X^{3}]}{3!} + \frac{t^{4}E[X^{4}]}{4!} + \cdots \\ &=& 1 + \mu_{1}t + \left( \frac{\mu_{2}}{2!} \right)t^{2} + \left( \frac{\mu_{3}}{3!} \right)t^{3} + \left( \frac{\mu_{4}}{4!} \right)t^{4} + \cdots \end{eqnarray} \]この形を見ると、E[etX] を 1 階微分、2 階微分、3 階微分すると、モーメント μ1、μ2、μ3、・・・を生成できる。この関数からすべてのモーメントを生成できるため、この関数のことをモーメント母関数という。実際に、モーメント関数は次のように定義される。
\[ M_{X}(t) = E[e^{tx}] = \left\{ \begin{array}{l} \sum_{x\in X}e^{tx}P(X=x) \\ \int_{- \infty}^{\infty}e^{tx}f_{X}(x)dx \end{array} \right . \]モーメント母関数の性質
実数 a, b を用いて、確率変数 Y を Y = aX + b としたき、Y のモーメント母関数は、X のモーメント母関数 MX(t) を用いて次のように計算できる。
\[ Y = aX+b ⟹ M_{Y}(t) = e^{bt}M_{X}(at) \]また、Z = X + Y とした時、Z のモーメント母関数は次のように計算できる。
\[Z = X+Y ⟹ M_{Z}(t) = M_{X}(t)M_{Y}(t) \]